美しい音
ピアノの音の美しさとは
美しい音でピアノを弾くことは私たちのあこがれです。 そもそも「ピアノの音が美しい」というのはどういうことなのか, 対話型AIに聞いてみました。
AIの答えは?
AIによると,ピアノの音の美しさにはいろいろな要素があって, 「音の調和」,「豊かな音色」,「繊細なタッチ」,「余韻」が大切とのこと。 AIの説明を整理してみる次のようになります。
◇ 音の調和
楽器全体が共鳴して調和した響きをもち, バランスが取れている音。
◇ 豊かな音色
鮮明な音色をもち, 感情や音楽のストーリーを表現できる豊かな音。
◇ 繊細なタッチ
鍵盤に優雅に触れることで生み出されるニュアンスに富む繊細な音。
◇ 余韻
余韻が持続し,音楽的な深みや広がりのある音。
なかなか難しそうですが, 美しい音というものは, 鮮明で聞き取りやすく, しかも音同士の親和性が高く, 調和的な性質のものだと言えそうです。 ともあれ, 誰でも初めからできるようなものではなく, 少しずつ上手になってゆくもので, 丁寧な練習を心がけることが大切なのだと思います。
鍵盤に優雅に触れるとは
ところで,AIがいう「鍵盤に優雅に触れる」とはどういう意味なのか。 これについては分かりやすい説明を引き出せませんでした。 単に見た目の問題ではないはずですが, なにかヒントが欲しいところです。 そこで,美しい音の出し方について詳しく書かれた本をAIに聞いてみました。 何度か質問をするとその都度答えが変わりますが, ある書名が繰り返し挙げられました。 それは,ライマーとギーゼキングの共著『現代ピアノ演奏法』という本です。
よく聴くこと
実際にこの本を見てみると, 「自分の音をよく聴くこと」の大切さを強調しています。 これは当たり前のように思えますが, 実はとても難しいのではないでしょうか。 たとえば自分の歩き方や顔の表情のように, 癖というものはなかなか気づきにくいもの。 演奏を録音して聞いてみるのは一つの方法ですけれど, 弾き方の癖をなおすには, 自分の音に注意を向け意識を集中させることが大事なのだと思います。 「ピアノは耳で弾く」という感じでしょうか。 あるいは「全身で音を感じる」ということかも知れません。 そしてこのとき, 手はおのずから鍵盤に優雅に触れているのではないかと思います。
ベートーヴェンのエピソード
話が飛びますが, ベートーヴェンの印象的なエピソードを。 ルードウィッヒ・クラモリニが婚約者のナネッテ・シェヒナーとともに, 最晩年のベートーヴェンの病床を訪れたときのことです。---
二人がベートーヴェンの部屋に入ると, ベートーヴェンは鋭い大きく見開いた目で来訪者をじっと見ていましたが, やがてルードウィッヒであることに気づいて顔をほころばせます。 ルードウィッヒは少年のとき, ウィーン郊外でベートーヴェンと同じ家で暮らしたことがあり, 長じてテノール歌手になっていました。 ナネッテもオペラ歌手でした。 二人はなにか歌うように促され, ルードウィッヒがベートーヴェンの『アデライーデ』を, ついでナネッテがベートーヴェンのオペラ『フィデリオ』のアリアを歌います。 このときベートーヴェンはしっかりナネッテを見つめながら, 胸のところで何度も小さくタクトをとったので, ナネッテは感激してしまいます。 ナネッテが歌い終わると, ベートーヴェンはしばらくのあいだ両手で顔をおおっていました。 やがて演奏に深い感情が込められていることを心から賞賛します。 そしてベートーヴェンが二人を祝福すると, ナネッテは感きわまってひざまづき, ベートーヴェンの手をとります。 誰も言葉を発することができません。・・・
耳が聞こえないベートーヴェンは二人が歌う姿を眼で見て, 二人の音楽を心の耳で聴いていたのです。 ナネッテの姿は本当に優雅だったに違いありません。
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