いずみのほとり

いずみのほとり

夫の語ってくれた思い出です。---

古いノートの間から子供の頃使っていた合唱の楽譜が出てきた。 コピー機などなかった時代, 須藤先生という小学校の音楽の先生が, 合唱部のためにガリ版刷りで作ったものである。 わら半紙がもうぼろぼろになっている。

須藤先生には, 音楽の授業と合唱部で大変お世話になった。 先生の合唱の練習は本格的なもので, 毎年コンクールに出場していた。

古い楽譜を見ていると, 合唱の美しい響きがよみがえってくる。 「あさの並木みち」,「アルバム」, そして「いずみのほとり」…

みずよ みずよ きれいなみずよ
みずよ みずよ あきのみずよ
あおいそらや すすきのかげを うつしている

むかし むかし いずみのほとり
てんしたちが こひつじたちと あそびました
むかし むかし いまはむかし

コンクールの本番では, 練習の甲斐あってかなりよく歌えていた。 私は二部合唱のソプラノの集団に入っており, 一生懸命歌った。 「あおいそらや」のところで, 音と気持ちが高まる。 その大事なところで, 私の声が割れた。

当時私は変声が始まったところであり, 須藤先生はそれに気づいていた。 変声期の子をコンクールのメンバーに入れるか否か, 先生は本当に迷っただろう。 私は先生にずいぶん迷惑をかけたが, 先生は何かと気にかけて下さった。 もうお会いする機会はないかもしれないが, もしかなうことなら, いまも音楽を大切にしていますとお伝えしたい。

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